シュレミールの小さな潜水艦
ゲーマーは二度死ぬ。一度目は社会人として、二度目は人間として。
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夢の島包囲戦

11月下旬に開始された「夢魔のいたずら」イベントは、普段なかなか見ることの出来ないBossや、
ラストバド城といったモンスターが大量に出現するイベントであった。
(俗に公式MPKイベントとも言うが)
ただ、使用されるMapが橋でつながれた地形の夢の島(略称DI)であるため、当然橋の前で大混雑が発生する。橋の最前面のキャラクタしか戦えない時間が長く、「橋ゲー」「行列イベント」とも言われ、ユーザー間での評価は決して高くはない。

しかしそれでも、12/2(最終日前日)、夢の島水-火付近で行われた包囲戦は、偶然発生した、意図された状況ではなかったものであるが、見知らぬ人々が利害を超えて一致団結した稀有な状況であり、MMORPGの醍醐味の一端を十分に見せてくれるものであった。

夢の島包囲戦(Dream Island Pocket)の経過は以下のとおりである。

23:30、イベント開始の告知があり、DI各地にモンスターが出現を始める。

イベント開始前からDIで待機していた各部隊もモンスターの波の圧力に抗し切れず、ほとんどがその場で全滅した。一部の部隊は奥地で抵抗を続けていたようだ。

一時、DIは完全にモンスター側の支配下に置かれ、再突入も難しい状態となった。しかしプレイヤー側は絶え間なくDIへの突入を繰り返し、2回の総突撃を撃退された後、3回目の突撃で入り口に橋頭堡を確保した。これにより、戦力の逐次投入が可能となった。

風エリアは比較的簡単に制圧が完了した。これは、橋頭堡確保の際、付近のモンスター戦力に損害を与えていたこと、早期に突入路が開通したためであると考えられた。

風エリアではいまだ各地で敵戦力の掃討戦が行われていたが、プレイヤー側主力はすでに地エリアへおよび水エリアへの侵攻を開始していた。シュレミールは水エリア方面集団だったため、地エリアでどのような戦いがあったかはわからない。しかし、戦力的、地形的に苦戦する要素は見当たらない。橋までは順調に制圧していたと思われる。

水エリア方面集団は苦戦していた。ラスタバド系のBossが他者変身を連発するため、戦線が一向に前進しない。特にライアは最悪であった。地形が良くないため(橋)Boxできず、また移動することも出来ない。突入しようにも最前線の支援WIZが動けないから最前線に戦力を投入できない。

多数の戦力を有していながらこれを活用できない、まさに狭隘地形の見本(隘路)である。

しかしそれでも、最終的に水エリア方面集団は水エリアを突破し、
火エリア手前の島に突入を開始した。

このときシュレミールも(弓でありながら)最前面を経験し、エルフでもCPをケチらなければ相当の生存性能があることを確認した。

火エリア手前の島の制圧もほぼ終わり、掃討戦に移る頃、主力は火エリアに向けて進行を開始した。ラスタバド系の敵だったが、Boss級は不在、状況は順調にDI制圧に向け推移していると思われたが・・・。

不意に、AllChatで敵戦力の追加投入を示唆する告知があり、一瞬後、汚れた精霊の大集団がプレイヤー側戦線後方(手前島)に投入された。掃討戦に移っていた部隊は分散していたこともあり、瞬く間に全滅した。主力は橋の上、残った前衛も掃討戦の最中であり、偶然ではあるが、最悪の(モンスター側にとっては最良の)タイミングでの伏撃となった。

汚れた精霊の大集団は魔法を速射砲のように連射し、プレイヤーを次々と蒸発させてゆく。

プレイヤー側は戦線後方を見事に食い破られた形となり、優秀な前衛も支援なしでは長時間は戦えない。また、さらに悪いことにラスタバド側(火エリア側)にも増援があり、ラストバド近衛兵が狂ったように突入してくる。もはや、完全にプレイヤーは包囲された。

汚れた精霊と言う金床、そしてプレイヤーを叩き潰そうとするラスタバドのハンマー。
目に見えて人数が減り、いまや橋の上に残っているだけとなった。
皮肉にも、侵攻を阻害してきた地形が、いまプレイヤーをモンスターから守っている。
この地形でなければ、すでにこちらは全滅しているだろう。
誰かがつぶやく。
「なんだか、人数が減ったね・・・」
「気のせいじゃね?www」
「そうだよね?あははw」

僕達は笑いあっていた。この絶望的な状況で。
増援は来ない。なにしろほとんど最奥の場所なのだ。最短でも30分はかかる。
Potは残り少ない。これまでにもかなり使っているのだ。
MPは少ない。もう、MPを回復できる安全な場所なんてどこにもない。

そう、ここは最高だ。僕達はこんな最悪の、絶望的な戦闘がやりたかったんだ。
スタンを喰らって、バカみたいな威力の魔法を受けて、モンスターに集られて、
畜生、畜生、これ絶対無理って言いながら死にたいんだ。

「WIZを内側に入れてやってくれ!」
後方(この言い方もおかしい。なにしろ両方とも前線なのだから。汚れた精霊側前線というべきか)
の前衛二人が、根性で(他に言いようがないので)前線を押し上げ、戦線の整理を図っているのが
見えた。あれはすごい。僕には敵を撃ちながら見ていることしか出来なかった。

そのさらに後ろに、二人の前衛が静止し、エンチャントを掛けていた。
さらに後方のWIZは貴重な空間を利用してメディでMP回復に努めている。
多分最後のMPチャージとなるのだろう。
このメディが最後、もう回復の機会はない。

汚れた精霊側戦線ではついに通常の防御をあきらめ、損害覚悟の二重戦線に切り替えたようだ。
ほとんど会話なしで、(またするだけの余裕もなく)この戦線再編は行われた。

プレイヤーは次々と倒れ、もはや数えるほどしかいない。
誰かが言う。
「落城寸前の攻防戦って、こんな感じなのかな?」

いよいよ戦況はいけない。もはやどこにも「後方」が存在しなくなり、WIZも変身を切り替えた。
後衛も近接戦闘しなくてはならない状況なのだ。
まさに末期、最終局面。破滅はもうそこに見えている。
だが、その破滅はいつ決定したのか?
包囲されたときからか?敵戦力が追加投入されたときからか?

それとも、プレイヤーがDIに侵攻したときからだろうか?

倒しても倒しても減らないモンスターの前に、
僕達は子犬のように無力だ。
しかしそれでも、機械のように敵を処理し、僅かな間隙をぬってMPをB2Sで回復し、
前衛にGHを掛け続ける。

僕達は戦闘機械だった。そして、そのとき、包囲されたプレイヤーは一個の戦闘機械として、
戦闘群体として、躍動する一個の生命として生と死の歓喜を叫び、悲歌を唄っている。

誰もが笑って死んでいく。
当然だ。僕たちは死にたくてここにいるのだから。

「Potがつきました、さようなら」といって死ぬ人がいる。
「モンスターどもに人類の力を見せてやれ!」と言って突入して死ぬ人がいる。
「おつかれーww」とさわやかに死ぬ人がいる。

そして僕は気が付く、先ほどから僕のタゲを剥がし、鬼神のごとく戦っていたDEが、
古い古い知り合いだったことに。
君がいなければ、僕はもう疾うに死者の列に入っていただろう。
でももうお別れだ、PotもMPもない。最後に1度だけGHをかけ、
「すまない、先に逝く」
とだけ言った。

僕は死んだ。

・・・それから程なくしてプレイヤー側は全滅した。

汚れた精霊とラスタバドのモンスター達はせわしなく動き回り、新たな敵を捜し求めているようだったが、もうそこに生きている人間は一人もいなかった。

死者たちは横たわったままお互いの健闘を称え、苦労をねぎらい、そしてまたリスタしていった。

・・・次の闘争のために。無限に闘争の歓喜を味わうために。



夢幻の島包囲戦はプレイヤー側全滅でその幕を閉じた。
しかし、再々突入したプレイヤー側は夢幻の島を程なく制圧し、無限とも思われたモンスターはプレイヤーによって駆逐され尽くした。

・・・だとすれば、本物の怪物は、いったいどちらなのだろう?
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紳士ですが みんなには
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