シュレミールの小さな潜水艦
ゲーマーは二度死ぬ。一度目は社会人として、二度目は人間として。
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永遠という名の幻想

僕が、彼女に会えなくなったのは4年前の冬だった。

僕の就職が決まり、もう、接続することが出来なくなったからだ。僕が接続した最後の日、僕と彼女はオレンの北、雪山で狩りをしていた。
僕はその日まで引退を告げることが出来ず、そのことを聞いた彼女は
「早く言ってよ。何か、考えたのに。」
と少し怒っていた。
でも僕は、最後の日こそ、普通に終わりたかった。
本と猫の話をして、他愛もない雑談をしながら狩りをして、最後の瞬間まで笑って、いつも通りに。
最後にさよならを言ったとき、彼女は少し泣きそうだと言った。
僕はもう、感受性というものが砂漠のように乾燥していて、そう、感慨を受けたわけでもなかった。
ただ少し、寂しさを感じたのは事実だけれど。
「落ち着いたら、必ず戻ってきてね。待ってるから。」
最後に彼女はそう言って、僕は約束して、接続を切った。

就職後、もう、ネットに接続する暇もないくらい忙しくて、ほとんどその約束も忘れていた。
年に一度ほど、IRCでかつての仲間と話をするくらい。
彼女も、もう、久しく姿を見ていないという。そうだろうな、と思った。
僕に少し余裕が出来て、またネットに接続できるようになったのは、去年のことだ。

再接続した僕が、最初にしたのは、いるはずのない彼女を捜すことだ。
当然彼女はいない。クランも四散し、知り合いもほとんどいない。手紙は届いた。まだ、キャラクタは存在しているらしい。僕は、復帰のお知らせだけを書いて送った。

復帰して、しばらく時間が経った。知り合いも増えた。Lvも上がり、僕の手は少しだけ伸びた。

しかしそれでも、彼女は現れない。

花は散る。人は死ぬ。時は止まることなく流れ、諸行無常、万物流転のこの世にあって変わらぬものなどない。長い時間の中で、今こそが祝福された休日のわずかな時間であることを人間は忘れ、今がさも永遠に続くかのような錯覚を持つ。

彼女にはもう会えないだろう・・・。僕はそう思いつつ、彼女と最後に歩いた、雪山に行く。
雪山は3年前と少しも変わらず、ただ、狩りをする人の姿だけが絶えていた。
誰もおらず、しんとした雪山で、僕は彼女の幻視を見る。
僕が剣で、彼女が弓。お互いヒールを掛け合うおかしなペアのエルフがいたのだ。
僕は更に思い出す、二人で飼っていた犬のことを。
僕が拾った犬だった。飼い主を捜したが見つからず、僕が飼うことにしたら、彼女は
「名前が気に入ったから、私が飼うわ」
と言って、育て始めたのだ。それ以来、ペアの時はその犬を連れていた。
最後の、その時も。

僕は思う、僕があのとき、悲しみを感じなかったのは、どこかに、戻れば彼女に会える、
その思いがあったのではないか。
また、あの犬を一緒に育てられると思ったのか。
また、本と猫の話が出来るとでも、思っていたのか。
その幻想を抱いた愚かさの代償として、今雪山に一人彷徨する。

今でも僕は、彼女の影を見る。猫の話をしているときに、wisを受けた瞬間に、誰もいない雪原に。
いつか、彼女が、ここに現れるのではないかとのかすかな望みを抱いて。

僕はここにいる。そして、あなたを愛しています。
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Lineage Canopusサーバで生きているエルフです
紳士ですが みんなには
変態 と言われています
誤解であることを みんなに伝えたいです


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